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2006年3月25日 (土)

最近のオーデイオに想うこと

私は 今は 町の電気屋さん。ちなみに 趣味のオーデイオ歴は 38年。 その間には メーカーでの仕事や個人の趣味を含めると 真空管アンプ 半導体アンプ 61キーのシンセサイザー ミキサー 業務用アンプ などを設計、試作、自作、修理などをしてきました。 今回から 電気関連 主にオーデイオについてブログを書くことにしました。 

近年では オーデイオの分野も 省エネ 多機能 が先行し オーデイオの趣味の 音を楽しむ ということが 普及機以下では 音を犠牲にしても多機能 省エネ 低価格路線で 特性も周波数特性がフラットならば良く 過渡特性などは中級機以下のカタログには出て来ないために 音楽を楽しむだけ のものになりつつあります。価格が安いので当たり前なのですが 海外生産で全体的に価格が下がりすぎていて 昔の普及機くらいの価格は 高級機の価格に思えたりして 物の価値がわかりにくくなっています。

今まで オーデイオマニアと呼ばれていた方は何を求めていたのでしょう? 「基本はHiFi(原音忠実再生)だよ」 と答える方が多いと思います。HiFiがベストと思う方には申し訳ないのですが でも 本当にそうでしょうか? 

とことん オーデイオを聴いて、見てゆくにつれ 「自分が良いと認める音に行き着くのではないか」と 思うようになってきました。原音に近い音はしても出せないのがオーデイオ。また そこまで突き詰める場合に、途中であきらめる方や、途中でそれがわかって早めに妥協する方も居ます。つまりシステムを仕上げてゆくには妥協点の見積もり方と機器やパーツの組み合わせの仕方次第とも言えます。 ですから 気にいった機器をすべて揃える方も居れば あるメーカーの製品だけで揃えてしまうのがベストと思う方も居ます。 このブログでは この機器は良くないというようなことは書かないつもりです。使ってみて良いものは紹介する場合はあるかも知れません。

オーデイオ機器には ユニット固有の音 メーカーが好む音 ユーザーの最も好む音 耳ざわりな荒さまで再生してしまうのが良いと思うメーカーもあれば 音をまるめて綺麗に聞こえる音を好むメーカー など様々です。 安価なものは後者が多く 高価なものでも後者を好むメーカーは有ります。 オーデイオマニアというのは 音へのこだわりで マニア度の深さを決めると言えます。 音(音質 歪)やカタログデータへのこだわりだけで音楽へのこだわりではない方も居ます。人間は加齢すると10KHz以上の音が聞こえにくくなるものですが 聞こえる方も居ます。私などはあまり若い頃と耳の特性は変わっていません。耳の特性はあまり良くないけれど オーデイオへの情熱はあるんだと言う方など いくら年齢を重ねてもオーデイオが好きでたまらないと言う方も居ます。

また オーデイオのマニアは常に新品を買って組み合わせて楽しむ派と 自作や改良して楽しむ派が居ます。 その間の方も当然居ます。 ここでは 自作したりして楽しむ派の側で書いてみたいと思います。

オーデイオ機器も レコードの時代は カートリッジの音(針固有の音(円形針 楕円針など) 針圧 トラッキング カートリッジの種類による音(MM MC VMなど) や フォノイコライザなども CR型 NF型の差や RIAAイコライジング特性などもそれぞれ固有の誤差があり 何を変えても音が変化したものでした。 テープ機器でもしかり 当時はノイズが多かったためノイズの音質まで問われたものです。それはもう いくら いじっても 終わりが無いのではないかと思われたものです。 

電子楽器やアンプなどでは ちょうどその頃のものが 現在 ビンテージと呼ばれている機器類です。アナログだからこそ味が有った時代の機器です。 バブル期の終わりくらい (10-15年前くらい)までの機器は部品もコストダウンされる前で、労力と手間をたっぷりかけてあり良く出来たものが多かったもの。 

これが4月1日に施行される PSE法の影響を受け中古販売が規制されそうになりましたが 方針転換で 3月25日 ぎりぎりセーフで販売されるようになりました。 PSEシールは無くても試験は簡単なものなので行うべきだと思います。 今まで通り販売されるので 良かった と思っている方は多いはず。 買う側は中古でも良いものは良いものなので販売を続けて欲しいものです。当時どうしても高くて買えなかったものも中古なら買える方も多いはずですから。当時高価だったものは 高級なパーツを多用していたり部品の選別や調整に時間をかけてその価値が高かったものであり 価格に比例して性能も質感も良いものです。

最近ではオーデイオソースとしては CDやDVD、衛星など デジタル・オーデイオとなり オーデイオソースのノイズは減り 使われる部品も限られてしまうため レコードの時代ほど 差異は少ないと思われがちですが アンプ系では 国内で製造されるものが減った現在のほうが 選別や調整に時間をかけることが少なくなったため(作ったまま計測して規格内なら販売するため)価格による差異が大きいと思います。 日本だからできた選別や細やかな調整をこだわりを持ってしなくなったことはもったいないと感じます。(高級機では今でも行われています。)

今はD級アンプなどで 低価格であっても発熱も少なく、省エネで 簡単にパワーは出せます。しかし 構成する素子は価格相応であり PWM後のフィルターなどの調整は1台 1台 個別に行っているわけではありません。安いのにはわけがあります。 中級機やハイエンドモデルは確かに調整も行われており 音質(質感)の差異は少ないと感じますが 普及機以下では それはもう 「おいおい これじゃ ちょっと前のラジカセの中級機のほうがいい音かも。。」と 悲しくなるくらいのものもあります。

最近 オーデイオを始めた方は 中古品のバブル期の製品で中級機以上のアンプを手に入れて最近のアンプと聴き比べてみることをお勧めします。 最近 真空管アンプは見直されています。 なぜでしょう。。 半導体アンプがIC化されたりD級アンプになってきて 一般の方が買えるレベルの価格帯の普及機までの半導体アンプの音があまり良く感じないからではないのかと思うようになりました。

真空管アンプはトランスを使うので音の基本波やハーモニックスが正弦波に近い音になるために歪みが大きめでも音が耳触りにならない利点があります。真空管アンプの音質は私も好きで自作品を使っています。

トランスを使うメリットはもう1つあります。インピーダンスマッチングです。最近の半導体アンプの出力インピーダンスとスピーカーでは現実にはマッチングしません。スピーカーは8Ωでも8Ω出力のOTL半導体アンプは無いに等しいくらいです。年々 パワーアンプはローインピーダンス化されています。 インピーダンスマッチングを考えると オートトランス式のインピーダンス変換器を入れるとかをしたいくらいです。少し前までは インピーダンスマッチング専用のトランスを販売していましたが 需要が少ないためか生産終了してしまいました。使ってみれば半導体アンプでも真空管に近い音が出るのかも知れません。真空管アンプは現在でもメーカー製 自作ともに 現在も作られているためタムラ製作所など トランスメーカーもオーデイオ専用のトランスを供給しています。

トランスは短所もあります。 主に低い周波数を含む矩形波的な信号は劣化させてしまうため専用設計されたものでなければ音が劣化し 価格も高いため カタログ特性を良く、低価格化を目指す半導体アンプの信号経路のトランスは省かれてゆきました。

半導体のアンプでも 時代とともに音が変化しています。 昔の(10年から15年前の)高級機は今でも良い音です。(音の質感的にはアンプとしては平成5年くらいまでに確立されている。つまり10年前の中古でも調整されたものならば 今の高級機にもひけを取りません。)使うには 劣化も激しいのでコンデンサの交換や調整などのメンテナンスをして使いたいものですが メーカーのサポートや部品在庫は通常は生産終了から7年(最短のもので3年)で終了しています。当時の回路のままでも最近の低ESRの優れたコンデンサなどを使えれば当時よりも性能は良いはずなのです。アンプなどメカ部品が無いものは、良いものはいつまでも良いのでメーカーとしてもずっとサポートをして欲しいものですが アナログ系の技術者の不足や在庫を置ききれなくなるのでそうも行かないようです。

1つの信号を扱う機器の計測や調整は 比較的楽ですが オーデイオは 色々な信号周波数 様々な振幅が組み合わされて増幅されるために 測定器だけでは計測しきれない 部品の個性の音 ハーモニックスの特性や高調波の聞こえ方の質などがあります。FFTでも解析しきれません。カタログデータがすごく良くても それよりも特性が劣るが聞こえ方が自分の好みに合うアンプなどは 良いものと言えるわけです。真空管アンプなどは 歪率としては半導体の2桁下くらいですが 実際に聴いてみると半導体アンプよりも良く聞こえるものも多くあります。アンプに関しては 聴いてから買うことをお勧めします。最近では秋葉原などでも買う前に充分に聴かせてもらえるショップが減っていることは寂しい限りです。

不定期ですが これからもオーデイオについて 気ままに書いてゆきたいと思います。 試聴できる機会の紹介や 回路が簡単でも、高級パーツを使ってキットなどの製作が出来ればと考えています。

まだ 書きたいことはありますが 初回はこれくらいで V(^。^)

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コメント

町の電気屋 ブログ立ち上げおめでとうございます。今後の更新を楽しみにしています。

私は原音再生は現代の装置のメカニズムでは無理と決めつけています。生の楽器、声、メカ、自然の音、どれの音もオーディオ装置が出す音は、現実とは程遠いです。所詮は原音再生を求めても、それは音のミニチュアに過ぎないのです。原音再生が無理と思うと、私もまた好みの音を追う人間になりました。
バブル期以前のアンプを中古で安く買い、CDを聞いてみたりしました。いずれのアンプも独特の音があり、メンテナンスもしていない状態でしたが楽しく音が聞けました。翌日も仕事があるのに一睡もせず徹夜であれこれとCDとアンプを替えて聞き、眠らぬまま出勤するという愚かな事までした程の魅力があったのです。
ところが狭いボロアパートです。アンプのおいしい領域では大きな音は周りに迷惑をかけ、その後のオーバーホールやメンテナンスもありましたし、そしてスペースもかなり奪われる。そんなことから生活には合わないと感じ、全てのアンプを手放しました。後に今時のやや小さめの外観のアンプを聞きに店に行ってみたりしましたが、手の届く物で魅力のある音には出会えていません。
ある時、オーディオとは関係なくICアンプを作りました。時代遅れもはなはだしいフルレンジスピーカーと組み合わせてみたところ、気に入った音が出てきました。オーディオとしては失格の音なのに、私には魅力を感じました。

Qさんの文章中の 「カタログデータがすごく良くても それよりも特性が劣るが聞こえ方が自分の好みに合うアンプなどは 良いものと言えるわけです。」 には全く同感です。このとき私が作ったICアンプは、やはりオーディオ用には不十分である事は認めますが、それでもたまに使っています。

投稿: ぼよん | 2006年3月26日 (日) 03:01

コメントありがとうございます Qです。

>それは音のミニチュアに過ぎないのです。原音再生が無理
>と思うと、私もまた好みの音を追う人間になりました。
とことんやってみるとそうなりますね。 世の中いつまでも追い続ける方も少なくないものなのですが。追いすぎて(自分の求める音が変わるのかも知れませんが)毎年システムが変わる方も居ます。 

>楽しく音が聞けました。翌日も仕事があるのに一睡もせ
>ず徹夜であれこれとCDとアンプを替えて聞き、眠らぬま
>ま出勤するという愚かな事までした程の魅力があったの
>です。
それはそれで 勉強になりましたね。
私も 若い頃は アンプの回路で歪率に納得がゆかずに何度も徹夜したこともありましたね。 机上では動くはずなのにデバイスのばらつきであきれるほどずれていたのが原因でした。今のように半導体を計測選別できるHFEチェッカーやカーブトレーサーを持っていれば即解決だったのですが。

>手の届く物で魅力のある音には出会えていません。
そうでしたか。 自分の用途、好みに合うものは なかなか出会えませんよね。私なども 今あるシステムは試行錯誤の結果です。

>ある時、オーディオとは関係なくICアンプを作りました。
>時代遅れもはなはだしいフルレンジスピーカーと組み合わ
>せてみたところ、気に入った音が出てきました。オーディ
>オとしては失格の音なのに、私には魅力を感じました。
そのようなものですよね 私も1つ感動したことがありました。 スピーカーユニットを段ボール箱に穴を開けて取り付けて 箱ごと鳴らすと小さな音のときはけっこう良い音がするのです。 加工も簡単だし 中学校の頃は良くこのような工作をしていました。 スピーカーは学校の放送用のスピーカーに使う松下のダブルコーンのフルレンジスピーカーなどを好んで使っていたものでした。 なつかしい。

>このとき私が作ったICアンプは、やはりオーディオ用には
>不十分である事は認めますが、それでもたまに使っていま
>す。
オーデイオ信号は 計測で想定している項目だけでは無いのですよね。 TV信号のように決まりがあれば それほど問題は無いのですが。 オーデイオ信号は信号がすべて同時に出て来る場合もあり 大小さまざまで周波数も波形も異なるものがばんばん入ってきます。 カタログ値だけでは語れないのが聴いたときの音なんですよね。
私などは 計測器や RAL DSSF3  http://www.ymec.com/jp.htm
なども使って 解析はしていますが 耳での聞こえ方は波形には出ない(出ても複雑に絡み合っていてわからない)部分が多いのです。 
自分の耳で うるさく感じず 楽しめる音が出せれば良いのではないのでしょうか。^^;; (結局ここに落ち着きます)

投稿: Q | 2006年3月26日 (日) 17:20

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