私は電子回路の故障修理の仕事をしていますが 故障の症状はいろいろなケースがあります。
まずは清掃から開始しますが 古いものはいろいろな部分が劣化しているため掃除にも気を遣います。(特に スピーカーのエッジや樹脂の部品など)
1月は 連続で修理業務をしていましたが 難題が多くなかなか 「完成」まで達しません。
修理は 2月に割り込んでいます。
修理は機能を元の状態に修復して完治までできて「完成」です。 私が仕事を担当しているものは 回路と基板のハードウェアで 「アナログ回路」のものや アナログとデジタルの回路混在のもの など 「回路の調整や計測」があるものです。
故障している回路を探し 計測器で計測しながら 故障した原因を探し 部品を外し 基板の状態 などを1つ1つ確認し 部品を取りつけて 通電して調整、計測、確認を繰り返し 状態の変化を見る(開発で言えばデバッグ) 動作が仕様にマッチしていて安定していれば修理完了です。
古いものの場合は 可変抵抗(ボリウム)などが接触不良になるため調整が変動してしまったりします。汚れが原因の場合が多いので清掃してから確認して安定しないなら部品交換になります。
メーカー部品の供給が止まっているものは 部品の仕様を見て 元の部品と同等か その上のグレード 代替品に交換しています。(仕様を下げてしまう部品は使わない)
修理ですから定数や基本仕様は変えません。 (いわゆる 全レストアはしておりません)
修理後、基本仕様に入れば完成です。(できるだけ許容公差の中央値を目指しています。)
機器故障の症状は
・電源が入らない(通電しない)
・異臭がする
・異音がする
・ときどき故障する
(修理屋さんが行くと治ってしまうパターンや機器を軽くたたくと治るパターンもあります)
・時間がたつと設定や周波数がずれてゆく(ラジオやテレビなど)
・音が悪い
・感度が悪い
・自動の機能が働かない (AFC AGC スキャン ・・・ etc)
など 故障の箇所は様々ですが 長年使ったものは 経年劣化 調整ズレ 接触不良 絶縁不良 部品寿命 樹脂部品の劣化など が原因の故障が多いものです。
ラジオやオーデイオ・アンプの故障箇所は 接触部品の接点劣化、電解コンデンサーの液漏れ、コンデンサーの容量抜け、抵抗値増大、短絡、絶縁不良、周波数や感度、バイアスなどの調整ズレ(アナログ値)、設定ずれ(デジタル値)、バックアップ保持できない症状(バックアップ電池やバックアップ用キャパシターの容量減)・・など 様々です。
製品は新品のときは正常なわけですが 経年劣化や使用状態が原因でも故障します。
機器がいきなり故障するのは困りますが 技術の面で見れば 新品時からいままで正常に動いていた 回路が 故障する場合があることで 改善方法(まだ改善が足りなかったかも知れない)や致命的な故障の回避方法(フェイルセーフの工夫)も生まれます。
各メーカーは設計した通りに作るだけでなく、このような 市場に出てからの故障修理などの情報からの機器の改善を積み重ねて製品を改善したり次の製品開発をしています。
メーカーは 基礎研究をして製品を作ることに加え、製品を使ってみて不具合があればその原因を確認して、修復、改善の繰り返しをした このことが 「日本の物づくり」 を支えてきたと思います。
当方では 壊れた部品だけ交換して終わりではなく 修理をしても またすぐに故障してしまってはお客様が困りますので 「今回はなぜ壊れてしまったか?」と、今回の故障箇所が「再度壊れないようにするにはどうしたら良いか」も考えて対策するようにしています。
このことは 昔から修理屋さんがそのようにしてきたのを見ています。(子供の頃 良く行っていた電気屋のオヤジさんや 都内で家電修理をしていた頃に良く行っていたオーデイオ・メーカーのサービスマンも壊れにくい修理をするというポリシーを持っていた。)
あと何年使うかを考えてみると 修理の時点で 連続通電で不具合の駄目だしをしておくことは重要です。
古くなった機器で 調整箇所の多い機器の修理は あちこちが劣化しているために「完全な動作や当時の音」になるまで 不具合箇所を見つける「駄目出し」をしながら計測してゆくので、時間がかかるものもあり お待ちいただくことが多いですが 必要なことは確実にして復活させています。
今月も かなり過去に作られたものの修理が多いですが、お客様の 思い出があり かつ 優れた製品は 1台 1台 丁寧に生き返らせ、 修理や調整が最終的に仕上がったとき うれしく思っていただけるような修理を心がけたいと思います。
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